二胡上達の秘訣は正しい基礎
曽朴が教える正しい二胡の基礎
1.正しい演奏姿勢とは?


二胡の音を出す前に、大切なのは正しい姿勢と、その姿勢を保つことです。正しい演奏姿勢が取れないと「くせ」のある弾き方になり、上達の妨げになる上、人前での演奏時に美しく見えません。最初から正しい演奏姿勢を習慣づけてください。
1.座り方
.椅子の座面2/3の部分に腰掛け、太ももが水平になる状態で、足をちゃんと地面に着けてください。
・膝を肩幅に開き、左足を右足より、半歩前に出します。
・上体の力、特に肩の力を抜き、二胡の胴を左太ももと下腹部につくように置きます。
(初心者は体が左にねじれ気味になることが多いので常に上体をきちんと起こす事に注意しましょう。)リラックスするように心がけてください。
2.二胡の構え方
左手で二胡を持ち、腿から垂直より、少し前方に傾ける。左手の肘を下ろし、棹と肘は45度に構え、肩の力を抜いて、リラックス状態にします。
3.正しい運弓
弓を持つ右手の肩の力を抜き、重心を下にして、滑らかに運弓することが大切です。
4.顔の表情
目を前方へ、口はポカッと開けることなく、自然な表情で。
2.正しい演奏法とは?
演奏法について、何が正しくて、何が間違っているか、初心者にはわかりません。
正しい姿勢を取ることが、自然な体の動きを作り、短期間で確実に上達する秘訣です。
- ●二胡を上手に弾くのに不可欠な条件
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1.左手は「松」(中国語でリラックスの意味)
緊張すると指の動きが固まり、指の動きが遅れる原因になります。
指を自由自在に動かすには、リラックス(松)が必要です。
2.右手は「通」(中国語で流れの意味)
綺麗な音色を出すためには、右手の力を抜き、滑らかな運弓が必要です。
特に肩、腕、肘に力が入ると、動きがぎごちなく、音が途切れ途切れに出てしまいます。
その点、子供はあまり力が入りませんが、大人は緊張して力が入りやすいので、出来るだけリラックスして、力を抜くことを心掛けましょう。
- ●二胡を構える角度
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左手の親指と人差し指で千斤の下を軽く持つ
NG写真↓
二胡の棹と左手の肘の角度は45度に構え、重心を肘に感じるようにします。
肘が上に上がりすぎると左の肩の筋肉が痛くなり疲れます。肘を下に下げ過ぎると弦を押さえにくくなります。45度は一番理想的な角度です。
3. なぜ数字譜なの?

数字譜は、数字を使って音階を表しています。どんな「調」でも1234567の7つの数字で表示します。
4. チューニングができないと始まらない

開放弦の音を正しく設定することを、チューニングといいます。
チューニングが正しくないと、全ての音程に狂いが出ます。音合わせには、ピアノ、音叉、調子笛(ピッチパイプ)、チューナーを使い、外弦は4A(ラ)、内弦は4D(レ)の音に合わせます。
下の糸巻きを左手で持ち、右手で弓を持ちます。外弦の開放弦をゆっくりと4Aの音を聴きながら、弾いて調音します。
上の糸巻きを左手で持ち、右手で内弦の開放弦を4Dの音を聴きながらゆっくりと弾いて調音します。
※チューニング時、弓は普通の強さで長めに使い、出来るだけ安定した音量で調音してください。

1.左手の親指を糸巻きのつき通っている棹の根元に当て、小指は糸巻きの柄尻まで伸ばしておき、残りは、指間を広げて持ちます。

2.廻す時は、その状態のまま、糸巻きを滑らせないように、親指に力を込め、しっかりと糸巻きを差し込むように、ゆっくりと廻します。
(注意)メーターチューナーを使っている人が多いようですが、初心者には向きません、メーターの針は音の振動によって動きます。初心者の場合は、アップボウとダウンボウの力が不均一のため針がふれてしまうので、かえって難しいかと思います。どうぞ、Aの音を出して、よく聴きながら、自分の耳で音に合わせてください。
5. 美しい音色のカギは、弓の持ち方次第
弓を正しく持つことは演奏上とても大切です。下記の説明と写真をよく見て確認してください。
1.右手は力を抜き、手の平を左向きにしてボールを待つように自然に指を曲げ、人差し指の第2関節に弓の竹の曲がっている部分を乗せます。


2.親指と人差し指とで、竹を挟むように持つ。


3.中指と薬指を竹と毛の間に入れ、中指と薬指の指先を揃えてしっかり毛を押さえて持つ。


4.親指と人差し指の付け根に空間を作るようにします。この部分が閉じていると、弓を握って絞るムダな力が働くので、関節の動きが妨げられます。
(1)弓は、固定しないよう、持ち方に注意しましょう。
(2)脇を締めて、弓を琴胴(共鳴胴)に垂直に当てましょう。
(3)肩に力を入れず、肩を下げるつもりで弓を持ちましょう。
NG写真↓
6. 弓の分段及びポイントを知るべき

弓の全体を分割して表すことを「弓の分断」といいます。
上の図のように、弓の全体を分割して表すことを「弓の分断」といいます。
一般的に、「全弓」「先半弓、元半弓」「先弓、中弓、元弓」などに分けて称します。
音楽のリズムに合わせて、上手に弓を使えると、メロディにメリハリが出き、抑揚をつけたり出来るようになり、表現力がアップします。
●各弓の分断のポイント
全弓:元弓から先弓まで長く使いましょう。
元弓:右手に近い部分なのでノイズが出やすいので、力を弱めて練習しましょう。
先弓:右手から遠ざかるため、コントロールがしにくくなるので、音が弱くなります。少し強めに力を入れて弾いてみましょう。
中弓:安定した音が出る箇所です。美しい音が出やすいため、初心者は自然に中弓ばかり使ってしまう傾向にあります。
全てのポイントを意識し、コントロールして、音の太さを均一にするように弓を使えるようにしましょう。
7. 基本の弓法とは?
二胡の弓法は沢山あります。まずは「長弓」をマスターしましょう。
弓は、人の発声部分の声帯にあたり、左手は、人が話す時の口や舌の動きに当たると私は思います。
弓の運弓方法で音の長さや強さを調節する事で、音楽の表現をします。
二胡の弓法は沢山あります。
【長さと部位に区別すると】 長弓、短弓、全弓、中弓、右半弓、左半弓、先弓、根元弓など。
【運弓の速度から区別すると】 慢弓、快弓、トレモロなど。
【弓の方向から言うと】 拉弓(冂 ダウン・ボウ 元弓から先弓まで)、推弓(V アップ・ボウ 先弓から元弓まで)、分弓、連弓(スラー)など。
二胡を自在に弾くようになるのには、以上のような、沢山の弓法をマスターすることが必要です。
「長弓」が運弓技術の基礎です。
これがマスターできなければ、他の弓法に進むことはできません。
ウォーミングアップには「長弓」の練習を充分に行ってください。
8. 正しい運弓とは?
弓を動かす方法 ダウン・ボウ と アップ・ボウ
冂………(ダウン・ボウ)弓元から弓先への移動する(中国語 拉弓ラーコン )
肩を動かさずに、腕、肘を腰から離し、弓を左から右へ移動させます。
親指が伸びたら、手首は自然に曲がります。
弓は水平を保つようにします。(元弓から先弓までの移動)
V………(アップ・ボウ)弓先から弓元に移動する(中国語 推弓トウイコン)
腕、肘、手首を右から左へ移動させ肘を腰まで戻すようにします。この時、竹に当ている人差し指の根元は動かさず、親指は自然曲げ、手首を前に出すような感じで左に押します。
注意点:弓を上下させず、水平に移動させること。弓を持ち上げないように肩、腕、肘は、リラックスして、自然に重心を下に感じるようにして、弓を安定させます。(先弓から元弓への移動)
NG写真↓
●ポイント
1.弓を上下させず、水平移動させること。
2.手首も同様に水平移動させること。
3.肩・腕・肘は、自然体で重心が下にあるように感じつつ、運弓を安定させること。
4.速度と力の入り具合で、美しい音色が出ます。
9. 運弓の重要なポイントとは?
運弓の3つのポイント [平] [直] [安定](中国語で、ピン、ズ、ウン)
運弓している時、弓を上下させないで動かし、二胡の琴胴の上で平行に弓を移動し、弦に垂直に弓を当てます。

弓を揺らさず、棹に当たらず、離れず、一直線に動かすこと。

弓の毛を弦にしっかり当て音を安定させ穏やかに運弓すること。
(NG写真)↓
10. なぜノイズが多いのか?

圧と速度のバランスが悪いとノイズが出ます。
初心者はギィギィギィというノイズがよく出ます。その原因が判れば、対処の方法があります。
主に弓を弦に擦弦する時の圧と速度のバランスが悪いとノイズが出ます。
弓を弦に強く擦弦する時、弓を弾く速度を速めるとノイズが出ません。加えて、しっかり澄んだ音が出せます。しかし、速度をゆっくりにするとノイズが出ます。
弓の速度が遅い場合は、弦に軽く擦弦し、力を抜いて弾きます。
この圧と速度のバランスに留意するようにしましょう。
11.弦の正しい押さえ方とは?
千斤に一の指を当て、正しい音のポイントを覚えましょう。
一の指(人差し指)で弦を押さえる時、指の根元を千斤に軽く当てて、弦を押さえてください。千斤は起点の位置となります。千斤に一の指を当て、正しい音のポイントを覚えましょう。
弦を押さえる時は、内弦、外弦2本を一本の指先で平等な力で押えるのが基本です。
この時、横の方向から押える人が多いのですが、こうすると弦が歪むので外弦の音は綺麗に出ても内弦の音が綺麗に出ません。そこで指は上から下に棹に向かって押えるように意識します。この押え方をすると平等な力で押えられるので両方の弦の音が美しく出ます。
二胡の譜面には、弦を押さえる指番号が、数字譜の上に、漢数字で記されています。指に対応する数字は次のようになります。
○ 開放弦(開放は、数字譜では「○」または「ウ」と記されています)
一 人差し指 二 中指 三 薬指 四 小指
●押さえる位置
弦を押さえる場所は、写真のようになります。
二胡は、内弦と外弦の間が近いので、両方の弦を同時におさえます。
一指
二指
三指
四指
●ポイント
1.両肩に力を入れないこと。
2.左肘に重みを感じ、また棹を持つ部分に力を入れないように、軽く持つこと。
3.指の第一関節をしっかり曲げ、ピン・ポイントの音のタッチが鈍くならないように注意すること。
12.なぜ保留指が大切なのか?
保留指の形をマスターしましょう。
音階を練習する時、低音から高音に上がる時、前に使った指で弦を押えたまま、次の音を押え、弦に残した指を保留指と言います。
たとえば、ニ指で押える時、一指が押えたままの状態で保留指となっています。三指で押さえる時、ニ指は押えたままで保留指となります。
運指の正しい手の形を作るのには、保留指が必要です。保留指を使って指と指の間隔を身につけることで音程を正しく取る事が出来ます。
もし、保留指をしないで、都度都度、指を外すと、音程のずれる原因となります。
保留指の形をマスターできると音程が正しく取れます。さらに指の動きも小さくなり、快速の曲も、正確な音程で演奏する事ができるようになります。
13.正確な音程を取るコツとは?
各ポイントを注意して正しい音程になるよう心がけましょう。
●千斤は音程を正しく取るための基準位置
二胡を持つ時、まず一指(人差し指)を千斤に当て、千斤の位置を確認するとともに、一指の押える場所を確定します。千斤を起点とし、ポジションを記憶します。
一指と千斤が離れすぎると、音程が確定できず不安定になります。
●左手親指の重要性
左手で二胡を構える時、親指を棹に当てる。棹を廻り込むような持ち方をする人を多く見てきました。これは大間違いです。これでは音程が低くなってしまい、ビブラートも出来ません、ポジション移動もスムーズに出来ません。原因は親指を二胡の棹に当てる当て方が正しくないからです。
NG写真↓
正しい持ち方は、親指は立てて上向きに棹に当て、弦を押さえる指は斜め下に伸ばすのです。その時、弦を押さえる指先と親指の付け根のこの二点が正確に取れるとばっちりピンポイントの音が出ます。ビブラートをする時も、この二点が正しく決まると、楽に出来るようになります。
●指の連動の重要性
人差し指を千斤に当てて確認し、一指先の関節をしっかり曲げて弦を押さえ正しい音程を取り、耳で確かめる。その時一指が出来ると、この位置を起点としてニ指の音程を取る。正しく出来ればニ指を起点として、三指を押えて音程を正しく取る。音程を取る時は、指と指は個々に弦を押さえるのではなく連動性が重要なのです。
●力の弱い小指
小指の指先で弦を押さえると、弦から外れることがよくあります。そこで、小指の場合は指先ではなく、指先と関節の中間で押えます。開放弦から小指を使う時は指を曲げずに手を広げて押えます。ニ指、三指から小指で押さえる時、ニ、三指は弦を押さえたままで関節を曲げて小指を進めて押える。これらの指は支点となり動きを潤滑にする役となり、小指で押えた後、支点としたニ、三指をおさえたままにして、元の形に戻ります。
14.効果的な練習方法とは?

1.正しいチューニング
特に内弦と外弦の五度関係を正しく調弦しないと音程を正しく取れません。最初のチューニングがとても大切です。
2.ウォーミングアップ
10分~15分のD調の音階練習が必要です。長弓を使ってゆっくり弾き、音程が正しいかどうか耳でチェックし、心を落ち着かせる事も大切です。
長弓の練習は初心者に限るのではなく、経験者、熟練者全てに対しての基本功(練習の蓄積)だと言えます。
3.前回レッスンの復習
レッスン中の曲を弾き込み、曲や弓、手の動きを慣らすこと。先生に指摘された所を繰り返し練習することが必要です。
4.課題曲の練習
新しい曲をゆっくりと弾きましょう。
●課題曲の練習ポイント
1.左手の指番号、弓の冂Vを楽譜通り、正確にゆっくり、しっかり音を出して弾きます。(左手は音程を正しく取る事。右手の弓でしっかりと音を出す事)
2.楽譜を前半と後半に分け、前半をゆっくり繰り返し弾き、慣れてきたら、後半を練習します。(いきなり通しで弾かないこと)
3.最初から最後まで通して弾いてみます、上手く弾けたら、少しずつ速度を速めましょう。
人によって感覚がつかめなかったり、気分にむらがあったりで、会得するまでの時間は違いますが、ごまかした弾き方をしないように、苦手な部分を主に、何度も繰り返し練習しましょう。
そうすれば必ずマスター出来ます。困難な部分を壁にしないようにしましょう。
上達するという目標のために、楽譜を暗譜し、メロディを心に刻みこんでください。
両手の動きは、最初、頭で意識しておぼえますが、最終的には体で覚えるまで練習します。
美しい音色を人に聞かせる事を目指しましょう。